2022年11月20日(日)は、待ちに待った、山口洋さんが山形の内陸部で歌う日。
山口洋さんがコロナ禍の最中に偶然山形県の長井市で残りの大型二輪教習を受けたことが事の始まり。
3.11当日は海外にいて、その惨状を海外で見ていて何とかしなければと思った山口さんが、知り合いのいた福島の相馬を中心とした支援活動をされていることは、よく知られたことでした。
そこから10年がすでにたち、長井にも、福島から避難し、そして今は移住して生活と事業の拠点とされている方たちがいます。
あのとき、避難者を差別的な目でみたり、うちだってたいへんなのに人の世話まで。。。というようなことがあったのをおぼえているでしょうか。そんななか、長井市はたくさんの方の受け入れがはじまりました。
長井市は、以前からレインボープランという先進的な取り組みがあったり、川運の町で物流や商売の拠点でもあり、人を受け入れる素地があったことも幸いしてか、温かく迎え、そして支えようという動きが大きくありました。そのうねりから、避難者の皆さんと地元の方、そして地域外がらサポートする方々との交流事情が生まれました。それでできたのが「甦る」という日本酒です。甦るについてはいろんな方がたくさんリポートしているので調べてみてください。
ここ長井でその話を聞いた山口さんが、3.11のイベントなどで歌いに来てくれるようになりました。宴会をする大広間で、地元の皆さんを前に歌ってくれた山口さん。世界的ミュージシャンをこんなところで歌わせてばかりではもうしわけない。今度はきちんとしたステージで歌ってもらおう、ということで、市民の有志の皆さんが、山口洋さんのアコースティックコンサートを企画されたのです。企画の主体が私の友人で、私も楽しみにでかけました。
会場のあゆーむは長井市から少しさきのフラワー長井線「四季の郷」駅から歩いてすぐのところにあります。さすが、山にかこまれた土地柄だけあって、木をふんだんに使った素敵なホールです。
普段はあまりロックコンサートなどは開かれないんだろうな、という雰囲気のホールでした。
お客さんは、山口さんをおいかけて全国から集まったファンのほか、地元のおとうさん、おかあさんの姿も。きっと初めてロックコンサートに来たような方もいらっしゃったんじゃないかしら。
みなさん、ちょっとおしゃれして、素敵なハンドバックを持ったご婦人などもいらして、いい雰囲気です。
企画の皆さんが家族総出でむかえてくれます。弟さんが有名な音楽家で、クラッシックなどのコンサートを何度も企画されている方が主催者にいらっしゃったため、地方の有志コンサートにありがちなドタバタ感もなく、非常にスムーズでありながら、あたたかなお出迎えに感動しました。皆さんが本当に楽しみにしていたことが伝わってくるからです。
庭園と一続きになっているホールのガラスの壁が閉じられると、コンサートの始まりです。
いつもの山口さんの、闇を切り裂くようなギターの音色ではなく、木の壁と呼応するような、温かなギターの音で始まりました。
ギターも木でできているから、こういう場所を喜ぶのかもしれませんね。
山口さんの弾くギターはヤイリギターとヴィンセントギター。やはり山あいの岐阜から届いたギターだから、コンクリートジャングルより、こういう空気がきれいで森と水の音がするようなところが好きなのでしょうか。私は前から2列目という位置にいたからか、いつもとは明らかに違うギターの声が聞こえたように思いました。
この企画タイトルDon't Look Back, 震災で被害を受けた方はもちろん、直接の被害者でなくても心を痛めた人に向けて歌ってくれたように思いました。
東京シティヒエラルキー ブラインドパイロット などなど、山口さんの超絶ギターで深い歌詞を歌にのせて皆に届けてくれました。キャリーオンでは会場のピアノを弾いて歌ってくれました。
明日のために靴を磨こう、オリオンへの道。
私ごとになりますが、どれも山口さんファンだった私の母が好きだった歌です。
父をがんであっという間に亡くし、震災で自分の故郷が壊れてとても悲しんでいた母。山口さんの歌にすごく励まされていました。そう、山口さんの歌は、高齢者を励ます力もあるんです。
明日のために靴を磨こう、なんて、病床で何度も聴いてたから(個室だったので)、看護師さんたちも覚えて一緒にうたってたほどでした。ロックは、若い人のためだけにあるのではなく、人生後半のみんなの明日のためにも役立つんです。今回、初めて山口さんの歌を聞いた方も、きっとそんな風におもったんじゃないかな。こういうきっかけがなかったら、ロックコンサートに行かなかったと思うし、山口さんのことも知らないまま死んでいった人も多かったと思います。そういう意味でも、置賜(長井など、山形の山側地域の呼び名です)の皆さんへのギフトですね。
山口さんの音楽は、再生の音楽です。なんどでもなんどでもやりなおせる。また、たとえいばらの道であっても前に進もう。というメッセージがあります。だんだん年を重ねていくと、つらいことの方が多くなります。しかしその時にも勇気をもってすすめば、きっと得るものはあります。そんなことを音楽で感じられました。
高齢者ではなく私の若い友達も、「自分の人生などいろいろなことを考えたコンサートは初めてだ」といっていました。
いつもの山口さんとは少し違った、ライブというよりはコンサート。おしゃべりも多めで山口さんの人となりがわかったとおもうし、初めてでもすんなり入れたのではないかしら。
ループをつかったり、いろんな音がでたり、チャーリーが来たり(笑)、プロってすごい!!の感動もたくさん味わわせてくれました。普段の山口さんソロでは、ギターソロがほんっとすごくて宇宙につれていかれるような、そしてある瞬間置いてきぼりになるような、この世のものではないような名人芸があったり、ちょっとこわいくらいなんだけど(笑)、この日は、それよりもうちょっとおだやかでわかりやすかった気がします。民謡をアレンジした曲もあって、ひばりさんの話もいれるなどは、さすがですね。
有名なミュージシャンになればなるほど、自分のファンでない人の前で演奏することは少なくなると思います。震災がきっかけではありましたが、こういう場所で、違った一面をみせていただけて、ファンとしてもとてもよかったです。
そして、50半ばをすぎても、行動を起こせば、新しい出会いがあり、新しい友達ができるのだということも教えてもらいました。
音楽は人をつなぎ、明日をつなぎます。
今回は、山口さんも長井への恩返しとおっしゃっていたし、長井のみなさんも、これまで何度もボランティアで歌ってもらったことへの恩返し、といっていました。
支えてもらったこと助けてもらったことを忘れないで、感謝して、お返しして、人の言うことは素直にきいて(笑)、そうやっていきていけば、きっと、よい人生がこれからも続きます。
この気持ち、山口さんの音楽、長井のすばらしさ、を皆に伝えていきたいです。
音楽が人を励ますということを書きましたが、
これから人生が長い、子供たちを励ます歌を歌っている人といえばミーワムーラだと思っています。
この話は今度また書きますね。